今日もパリの街角で

数枚の写真とともに パリの日々刻々をご一緒に

今日の林檎

 

パリ18区クリッシー大通りのとばっ口に

その大通りの

両側に車道を挟んだ中央の

ゆったりとしたとした広さの遊歩道に

白銀に輝く

かなり巨大なりんごがあるのです。

 

車などでの通りすがりに見たことがあって

しかしじっくりとその正体を確認できるほど

見たことはなかった。

 

パリ市の街頭を飾る美術品の設置の文書で

見かけた事もあった。

 

 

そのりんごを

間近でじっくりと見てきました。

 

2mを超える高い石の台座に

「Charles Fourier シャルル・フゥリエ」と

刻まれています。

 

なるほど。。

 

 

18世紀後半

大革命の始まる15年ほど前に生まれて

19世紀前半に亡くなった

哲学者の名前です。

 

しかも

「ユートピア的社会主義」の実現への提言を

論文にまとめた人だった。

 

死後50年ほどして

彼の銅像が建てられていたはず。

 

それがこの台座で

ソファに前かがみに座った坐像の写真を

見たことがある。

 

 

この林檎の表面は

地球儀になっていた。

 

一番上に

日本列島が見えますか?

 

 

調べてみると

その銅像は第二次大戦が始まって程なく

ナチスに承認されたペタン元帥の作った傀儡政権

「ヴィッシー政権」に

大砲の鋳造のために潰されてしまったとか。

 

ナチスは社会主義を名乗りながら

本物の社会主義者は大嫌いだったのです。

 

20年以上台座だけが残っていて

痛み放題だったのに

60年台末に前衛芸術家が

4面ガラスの電話ボックスを上に載せたそうですが

三日後に警察が撤去したとか。

 

その後曲折があって

2011年にパリ市の依頼で

フランク・スクーリ制作のステンレスの林檎が置かれた

と。

 

 

ジャック・フゥリエは

レストランで頼むデザートの林檎1個の値段が

当時14スー(ビタ銭14枚)なのに

栽培農家は

その値段で100個の林檎を売っている事に

大いなる疑問を抱き

500人から3000人程度の集団で

あらゆる財産を共有し

理想的な共同体として暮らしてゆく総合的建築物を

考えたとか。

 

今や我が祖国も

貧富の差が際立って開き

固定化しつつある様な状況を見るにつけ

富の分配と所有のシステムを

新たに考えだす必要があるんじゃなかろうかと

深刻に思う今日この頃であります。