今日もパリの街角で

数枚の写真とともに パリの日々刻々をご一緒に

今日の教訓

 

パリを日々あちこち歩き回っていますと

ストリート・アートに感動しない日は無い

と言っても

過言ではありません。

 

もちろん

めちゃくちゃな落書きも多数溢れているのですが

それと同じくらい

芸術性や

精神性に溢れたアートに出会うことがあって

しばし思いに耽ってしまうことが頻繁にあるのです。

 

これ

ある路地裏の古びた建物の裏壁に

小さく書き込んであった

『アリとキリギリス』

です。

 

蟻もキリギリスも

こぶし大ほどもない位に小さく描かれていて

うっかりすると見過ごしてしまうような作品なのですが

その

構図といい

輪郭といい

描写といい

見事な表現力です。

 

しかも!

 

よく見ると

この「キリギリス」は実は「セミ」ですよね。

 

実は

ギリシア人イソップの寓話集でおなじみの

「アリとキリギリス」のお話は

源は古代ギリシア以前にまで遡るらしく

かの地では

オリジナルは「セミ」なんだそうです。

 

そういえば

元来セミは

生息限界の北限を超えている欧州大陸には

ギリギリ地中海沿岸を除いて

生息しないのです。

 

ですから

普通の多くのフランス人にとって

セミは身近なものではないので

普通は絵に描いたりしない。

 

このアートの作者は

しっかり「原典」をご存知だったようで

教養を感じさせてくれます。

 

 

すぐ近くに

こんなのもありました。

 

『宙に送る』

とタイトルが書かれていて

ストリートアートにタイトルが付与されている

珍しいものです。

 

なんだかとても「思索的」なタイトルで

絵画自体も非常に質が高いし

雨風にさらしておくのがもったいないと

本気で思ってしまいます。

 

単なる「壁の落書き」ではない

「ストリート・アート」は

美術館に収納することを想定していない以上

長期間保存するのが困難な故に

存在が儚い分

余計にかけがえのないものだと思う昨今です。

 

「浮かれてないで働け」

という「即物的」な教訓だけでなく

様々な「哲学的」思考を与えてくれる

パリの裏通り散策です。