今日もパリの街角で

数枚の写真とともに パリの日々刻々をご一緒に

今日の本物

 

継ぎ接ぎだらけ

のように思う方もいらっしゃるかもしれません

この古い石屏。

 

しかしこれは

オンボロになって継ぎ接ぎに見えるわけではなく

わざと

見せているのです

真の姿を。

 

日本で

「わあ古ぅ〜い」

と言われると

時代に遅れている劣った人物

みたいなニュアンスで

否定的な意味ですよね

殆どの場合。

 

新しいものにこそ価値がある

と。

 

のんのん。

 

実は

古ければ古いほど

価値があるのです

ヨーロッパでは。

 

 

まだらに

斑点のように見える部分は

この建物の起源からの石材の部分なのです。

 

おそらく17世紀に建てたときの塀の

石材のオリジナル。

 

 

この建物を修復した際に

その他の部分は

おそらく傷みがひどく

表面をセメントで固めてしまうしか

塀を救う方法がなかったのでしょう。

 

ただ

しっかり原型をとどめている部分は

「本物」として

誇らしげに見えるように残すのです。

 

塀の中の建物自体は18世紀の物の様ですが

その外壁も

ほぼ完全に修復されているものの

角の部分と

窓枠の部分との

「スミ石」だけは

残せる限り原型を残して

表面に見せています。

 

 

新しい

最高の素材をふんだんに使って

最新技術を駆使して作った

「ピカピカ」の新品は

それはその意味で美しいですが

お金を出せば

同じものは手に入ります。

 

ところが

時間が育んできて残ったものは

どれだけの大金を積んでも同じものは手に入らない。

 

だから

古いものほど本物で

古ければ古いほど価値がある。

 

それが

ヨーロッパ人の価値観なのです。

 

当地では

時代ごとに家具の変遷がはっきりしていて

時代ごとの様式があります。

 

19世紀の戸棚を手に入れて所有している人などざらで

現代に作った19世紀の様式の家具も

本物ではなくとも

様式として好む人は多いのですが

ある人が素晴らしいコピーを持っていて

「見事な家具ですね」と褒めたら

「右の扉だけはひいおばあちゃんが持っていた

当時の戸棚のオリジナルですよ」

と言われて

感心したことがありました。

 

人間も同じで

20年しか生きていない人より

40年

60年

80年と生きてきた人の方が

年輪が与える深みが魅力を高めるから

より素敵だと評価をするのです。

 

世の中の

それほど若くない人々よ

自信を持とうではありませんか。