シャンゼリゼに
異様な空間が出現していた。
撮影が薄暮の時間帯だったこともあり
写真に写ったそのままだと見えにくいので
少しだけ
色調や色温度と明るさなどをいじって
見えやすくしてありますが
ずらりと並ぶ建物の一角だけ
消えてしまったような空間が出来上がってる。
写真をよく観察すると
どうやら
細長い鏡面ガラス板をたてよこ均等に編み込んだ
カゴのような作りの平面らしいのです。
下半分は
筆者のいる通りの反対側の建物が映って
ベージュっぽい色合いに見えてるけれど
上半分は「空(くう)」。
銀色の市松模様が
上から下に向かって
半透明から色彩を帯びて
グラデュエーションになってるわけだ。
あるいは
地上の存在が
上部に向かって蒸発して
空に溶け込んでゆくような。。。
上の写真を下半分にしてみると。
この写真の最上辺に
『SAINT LAURENT』と薄いゴールドの表示があって
例のブランドの店だとわかるのですが
地上階は歩道を歩く人々の写り込みで
通りに面してウインドーも入り口も無い模様。
つまりこれ
ここに新店舗を出す為に工事中で
その現場の覆いだろうと思い当たった。
それで納得。
パリの家並みのバランスを守る感覚は
非常に厳しく
シャンゼリゼのような象徴的な場所になれば特に
石造建築が並ぶ中に
ここだけこんな建物が建てられるはずはなかった。
最近のパリは
昔の頑固な規制が緩んでいる部分が結構あるので
ついに「シャンゼリゼよお前もか!?」と
一瞬あせってしまったのでありました。
その現場の右隣を挟んで
もう一軒右は「Dior」
ということは
若きサンローランを見出して
主任デザイナーにまで抜擢してくれた
親方筋のディオールが
2軒隣に並んでる
ということだ。
そんな因縁を思い返しながらこの家並みを見ていると
なんだか唐突に
「歯抜けジジイ」
を連想してしまったのであります。